睡眠計測でわかること・わからないこと|合計時間は近い、覚醒は苦手

カテゴリ: 朝すっきりしない

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目次
  1. 覚醒の検出が苦手、というのが最大の弱点
  2. 総睡眠時間は、機種によって差が大きい
  3. 睡眠段階の判定は、まだそこまで当たりません
  4. 眠れない夜ほど、当てになりません
  5. 数値を気にしすぎることが問題になる場合もあります
  6. 指輪型は、腕時計型より覚醒の判定が良いという報告があります
  7. 病気の判断には使えません
  8. それでも計測する価値があるのは

計測できる項目には、当たりやすいものと、そうでないものがはっきり分かれています。

項目 当たり具合
眠っている時間を眠りと判定する 9割超(機種を問わず)
起きている時間を覚醒と判定する 18〜54%
総睡眠時間 平均で17分ほど長め。機種によっては40分以上ずれる
睡眠段階(浅い・深い・レム) 一致度はほどほど止まり

数字は、睡眠検査の標準であるポリソムノグラフィ(脳波などを直接測る検査)と比べた研究によるものです。

覚醒の検出が苦手、というのが最大の弱点

健康な34名を3夜ずつ調べた2021年の研究では、7機種すべてで睡眠を検出する感度は0.93以上だった一方、覚醒を検出する特異度は0.18〜0.54にとどまりました。

62名・6機種を調べた2025年の研究でも、感度は全機種90%超、特異度は29〜52%と同じ形です。

つまり横になったまま眠れずにいた時間の半分以上が、「眠っていた」と記録されます。

理由は測り方にあります。腕の動きから睡眠を推定する仕組みなので、じっとしたままの覚醒は動きとして現れません。2021年の研究も「人は目が覚めているあいだ、いつも大きく動くわけではない」と書いています。

総睡眠時間は、機種によって差が大きい

24件の研究・798名をまとめた2025年のメタ解析によると、手首装着型のデバイスは平均で次のようにずれます。

  • 総睡眠時間:16.9分 短く見積もる
  • 睡眠効率:4.7ポイント低く見積もる
  • 入眠までの時間:2.6分 長く見積もる
  • 夜中に起きていた時間:13.3分 長く見積もる

ただし機種差が非常に大きい点に注意が必要です。前掲の2021年の研究では、総睡眠時間のずれが**+2.6分の機種もあれば、+43.7分・+46.8分の機種もありました**。

同じ「7時間眠れた」という表示でも、機種が違えば意味が違います。別の機種の数値と比べても意味がありません。

睡眠段階の判定は、まだそこまで当たりません

浅い・深い・レムの4段階判定について、62名を調べた研究では一致度(Cohen's κ)が0.21〜0.53でした。統計的には「ほどほど」と評価される水準です。

75名・11機種を調べた2023年の多施設研究でも、判定の総合成績(macro F1)は最高0.69・最低0.26と機種差が極端でした。

なかでも当たりにくいのが覚醒と浅い睡眠です。深い睡眠とレム睡眠のほうが比較的当たる、と報告されています。

「深い睡眠が◯分だった」という数字は、目安として眺める程度が現実的です。

眠れない夜ほど、当てになりません

ここが実際にはいちばん困る点です。前掲の2021年の研究は、眠りが乱れた夜ほど機種の成績が落ちる傾向を報告し、不眠のある人ではとくに影響が出うると指摘しています。

よく眠れた夜は正確で、眠れなかった夜ほど不正確——数値を見て一喜一憂するには向かない性質です。

厚生労働省の健康づくりのための睡眠ガイド2023も、簡易な計測機器についてこう書いています。

現時点では、安価で購入可能な機器においては、計測精度の高さは十分とは言い難いかもしれませんが

数値を気にしすぎることが問題になる場合もあります

オルソソムニアという言葉があります。2017年に米国の研究チームが名づけたもので、計測データを完璧にしようとして、かえって眠りにこだわりすぎる状態を指します。

患者は、ウェアラブルの睡眠データを改善あるいは完璧にすることに心を奪われている(Baron ほか, 2017

同じ報告は、精度の限界を示す研究が複数あるにもかかわらず、患者の受け止めを変えるのは難しかったとも書いています。

数値が悪い日に落ち込んでしまうなら、しばらく計測を止めるほうが理にかなっています。 眠りを整えるための道具が、眠りを妨げては本末転倒です。

指輪型は、腕時計型より覚醒の判定が良いという報告があります

日本人96名を対象にした2024年の研究では、指輪型(Oura Ring Gen3)の特異度が**73.0〜74.6%**と報告されています。腕時計型の18〜54%と比べると高い数値です。

ただし、この研究は製造元の関与のもとで行われたもので、独立した検証ではありません。 著者に同社の所属者が含まれます。第三者による検証としては、前掲の11機種の多施設研究に指輪型も含まれています。

装着位置が指なので手首より動きを拾いやすい、という説明は理屈に合いますが、現時点で「指輪型なら正確」と言い切れる状況ではありません。

病気の判断には使えません

消費者向けの睡眠計測機器は、日本でも米国でも医療機器としては扱われていません。厚生労働省の該当性ガイドラインでも、健康情報を記録・表示するだけのプログラムは医療機器に当たらないとされています。

米国睡眠医学会は、はっきりこう述べています。

これらの道具は、医学的評価の代わりにはならない(Khosla ほか, 2018

いびきの最中に呼吸が止まる、日中に強い眠気がある——こうした心当たりがあるなら、アプリの数値を見るより医療機関に頼る4つのサインを確認してください。

それでも計測する価値があるのは

限界を承知したうえでなら、使いどころはあります。

  • 床にいた時間の記録として。 何時に布団に入り、何時に起きたかは、体感より正確に残ります
  • 日々の変化を見るものとして。 絶対値ではなく、同じ機種の中での増減を見る分には使えます
  • 受診のときの材料として。 数日分の記録は、状況を伝える助けになります(受診前の準備

当たらないから無意味、ではありません。何が当たっていないかを知って使えばいい、というだけの話です。

環境そのものを見直す段階なら、眠れない原因を3つの質問で絞り込むから切り分けられます。