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光目覚ましの商品ページに並ぶ「最大◯◯ルクス」という数字は、そのままでは他社と比べられません。どこで測ったかが書かれていないと、意味が定まらないからです。
理由は単純で、照度は距離の2乗に反比例します。日本電気技術者協会の解説にあるとおり、点光源の照度は「光度 ÷ 距離の2乗」で決まります。
つまり距離が2倍になれば、明るさは4分の1です。40cmで300ルクスの光源は、80cm離れると約75ルクスになります。
ルクスは「面が受け取った光」の量
ルクス(lx)は、国際単位系では lm/m²、つまり1平方メートルの面が受け取った光の量として定義されています(国際度量衡局)。
光源そのものの性質ではなく、「その位置での明るさ」を表す数字です。だから測る位置を言わなければ、数字だけが独り歩きします。
日本では、この問題に対処している製品分野があります。卓上スタンドです。消費者庁は家庭用品品質表示法にもとづき、照度を表示するならランプ中心直下から前方半径30センチメートルの円周上で測る、と測定方法まで定めています。
同じような規格が、光目覚まし時計にはありません(調べた範囲では見つかりませんでした)。だからこそ、買う側が距離を確認する必要があります。
研究で使われた光はどれくらいか
効果を調べた研究は、いずれも目からの距離を明記しています。
| 研究 | 対象 | 光の強さ(測定距離) |
|---|---|---|
| van de Werken 2010 | 健康な16名 | 300ルクス(40cm・目の高さ) |
| Giménez 2010 | 健康な46名(自宅) | 自分で選ばせると120〜400ルクス(平均265・40cm) |
| Leppämäki 2003 | 一般住民77名 | 平均214ルクス(約30cm) |
効果が確認されている帯は、目から30〜40cmで50〜400ルクス程度です。「10,000ルクス」といった桁の光は、これらとは別の話(医療機関で行われる領域)になります。
いずれの研究も、起床前の30分ほどかけて徐々に明るくする設定でした。パッと点灯するのではなく、夜明けを模した漸増が前提です。
何ができて、何ができないか
正直に書きます。報告されているのは、起床時の目覚めの悪さが軽くなることです。
- Giménez 2010:250ルクスの条件は、光なしの条件に比べて「完全に目が覚めるまでの時間」が19.7分短かった。自分で好みの強さを選んだ実験では24.8分短縮
- van de Werken 2010:起床後の主観的な眠気が有意に低下し、活動度が上昇した。ただし計算課題や反応時間には有意な差がなく、深部体温やコルチゾールにも影響はなかった
- Leppämäki 2003:睡眠の質が有意に改善(p=0.001)。ただし効果は控えめで、使用をやめると持続しなかった
そして重要な線引きがあります。Giménez の研究は、250ルクスでも体内時計の位相(メラトニン分泌が始まる時刻)は動かなかったと明記しています。
つまり「体内時計を直す道具」ではなく、「起きるときの眠気が軽くなる道具」です。 研究者自身がそう線を引いています。
買わずに済む場合
カーテンを開けて寝られる部屋なら、そちらのほうが強くて無料です。
屋外の明るさは、直射日光で最大10万ルクス、日中の屋外で25,000ルクスに達します。いっぽう標準的なオフィス照明は約500ルクスにすぎません。JISが住宅の寝室の全般照明に求める照度は20ルクスです(JIS Z 9110、2010年版)。
桁が3つ違います。 自然光を使える環境で製品を買うのは、順番として損です。まずカーテンを少し開けて寝るを試してください。
厚生労働省の睡眠ガイドも、体内時計への効果は「1,000ルクス以上の照度の光を日中に浴びること」で得られるとしています。この水準は屋外でしか現実的に得られません。
光目覚ましが向く場合
- 窓のない部屋、または朝日が入らない向きの部屋で寝ている
- 夜勤などで、明るい時間帯に寝て暗い時間帯に起きる
- 冬に日の出が起床時刻より遅く、カーテンを開けても暗い
これらは自然光で代替できません。この条件に当てはまるなら、検討する価値があります。
選ぶときに確認する3点
- ルクス表示に測定距離が書かれているか。 書かれていない数値は、他社と比較できません。書かれていれば、その距離を自分の枕元から目までの距離と比べられます
- 枕元に置いたときの距離で足りるか。 研究の設定は30〜40cmです。ベッドサイドテーブルが遠い場合、届く明るさは表示値よりかなり小さくなります(距離2倍で4分の1)
- 起床前から徐々に明るくなるか。 効果が確認された研究はすべて、起床前30分ほどの漸増を使っています。設定時刻にぱっと点灯するだけの機能とは別物です
朝の光は、その日の夜にもつながります
光目覚ましを使うにせよ使わないにせよ、日中に明るい光を浴びることは続けてください。厚生労働省の睡眠ガイドによれば、日中に光を多く浴びると夜間のメラトニン分泌が増え、入眠が促進されます。
朝の起きにくさと夜の寝つきにくさは、同じリズムの表と裏です。夜側の対処は寝る前のスマホをやめられない夜ににまとめています。
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- Giménez MC ほか「Effects of artificial dawn on subjective ratings of sleep inertia and dim light melatonin onset」Chronobiology International 27(6):1219-1241, 2010
- van de Werken M ほか「Effects of artificial dawn on sleep inertia, skin temperature, and the awakening cortisol response」J Sleep Res 19(3):425-435, 2010
- Leppämäki S ほか「Effect of simulated dawn on quality of sleep」BMC Psychiatry, 2003
- 消費者庁「電気機械器具(卓上スタンド用蛍光灯器具)」家庭用品品質表示法
- 日本電気技術者協会「照度と光度」(距離の逆2乗の法則)
- Blume C ほか「Effects of light on human circadian rhythms, sleep and mood」Somnologie 23(3):147-156, 2019
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(令和6年2月)