安全に関する注意
耳栓をすると、目覚ましや火災警報器などの音が聞こえにくくなります。就寝時に使う場合は、目覚ましが聞こえるかを必ず確かめてください。厚生労働省も、耳栓を使う職場では警報に音ではなく赤色回転灯などを用いるよう求めています。
目次
耳栓は、遮音値が高いほど良いわけではありません。
厚生労働省の騒音障害防止のためのガイドラインは、聴覚保護具の選定についてこう書いています。
遮音値が必要以上に大きい聴覚保護具を選定しないよう配慮すること
職場向けの指針ですが、理由は睡眠にもそのまま当てはまります。英国の安全衛生庁は、耳元を70デシベル未満まで下げる保護具は避けるべきとし、その理由を「会話や警報音の聞き取りが難しくなる」と説明しています。
寝るときに困るのは、目覚ましが聞こえないことです。 選ぶ基準は「うるさい音が消えること」ではなく、必要な音が聞こえる範囲で、気になる音を下げることです。
NRRとSNRは、直接比べられません
商品ページに書かれている遮音値には、主に2つの種類があります。
| 表記 | 由来 | 引き算の相手 |
|---|---|---|
| NRR | 米国(EPAの表示規則) | A特性の騒音レベルから引く |
| SNR | 欧州(EN 352系の規格) | C特性の騒音レベルから引く |
引く相手の測り方が違うので、NRR 30 と SNR 30 は同じ性能ではありません。 換算表のようなものを作ることもできません。比べられるのは、同じ表記どうしだけです。
日本にも規格があります。JIS T 8161-1:2020(聴覚保護具-遮音値の主観的測定方法)で、厚生労働大臣・経済産業大臣が主務大臣です。厚労省のガイドラインも「JIS T 8161-1に規定する試験方法により測定された遮音値を目安に」と、この規格を名指ししています。
表示値は、そのままは出ません
ここは規格自身が正直に書いています。JIS T 8161-1 の適用範囲には、こうあります。
この測定方法は,測定条件を管理することによって,再現可能な値を得られるようにした実験室的方法である。
実験室で、正しく装着したときの値だということです。
米国のOSHAは、A特性で測った騒音に対してはNRRから7デシベルを引くとしたうえで、さらに50%の安全率(2で割る)を適用するよう定めています。理由は「実験室で得られた減音量が職場で達成されることはめったにない」というものです。英国のHSEも、算出値より実際は4デシベル高くなると考えるよう指示しています。
つまり**「NRR 33」と書かれていても、その通りに33デシベル下がるわけではありません。** 商品を比べるときの相対的な目安として使うのが現実的です。
どれくらい静かなら十分か
環境省の騒音に係る環境基準では、夜間(午後10時〜翌午前6時)の基準値が住居地域で45デシベル以下とされています。
この水準を大きく超える環境(幹線道路沿い、線路沿いなど)でなければ、強い遮音の耳栓は必要ありません。気になる音の角を取る程度で足ります。
形状と、手入れのしかた
厚生労働省の長野労働局が公開している解説資料は、形状ごとの扱いを次のように書いています。
- ウレタンフォーム型(指でつぶして入れるタイプ) — 「汚れを保持しやすいので、使い捨ての使用が衛生的です」
- フランジ型(ひだが付いたタイプ) — 「洗って再利用できるため、変形しない限り長期間使用できます」
毎晩使うなら、洗えるフランジ型のほうが続けやすい計算になります。横向きで寝る人は、耳から出っ張る長さも確かめてください。枕に当たって痛くなると、結局使わなくなります。
安全に使うための3点
厚労省のガイドライン解説と、カナダ労働安全衛生センターの資料に共通する注意です。
- 耳の穴の形は人によって違う。 厚労省は「その人に適したものを使用すること」としています。合わないものでは、すき間ができます
- 緩みや隙間があると、遮音は落ちます。 厚労省は「装着の緩みや隙間があると十分な効果が得られない」と明記しています
- 清潔な手で入れる。人と共用しない。 カナダ労働安全衛生センターは、汚れた指での再挿入が耳の感染症につながると注意しています。弾力を失ったものは交換してください
なお、耳栓の使用によって耳あかの分泌が増えたり、自然に外へ出る働きが妨げられたりすることがあると、医学系の資料で指摘されています。毎晩使うなら、耳の状態が気になったときに耳鼻科で相談できることを覚えておいてください。
効果は、どこまで確かめられているか
正直に書きます。睡眠と耳栓の研究は、そのほとんどが集中治療室(ICU)の入院患者を対象にしたものです。
- 30件の試験・1,569名をまとめたコクランのレビューでは、耳栓やアイマスクの使用で総睡眠時間が長くなる傾向が報告されています。ただし著者自身がエビデンスの質は低いと明記しています
- 健康な14名にICUの騒音を再現した実験では、耳栓とアイマスクの併用でレム睡眠が増え、覚醒が減ったと報告されています
一般の家庭で使った場合の効果を調べた質の高い試験は、見つけられませんでした。 数百円から数千円で試せるものなので、合うかどうかは実際に使って判断するのが現実的です。
耳栓が合わない場合
耳が痛くなる、圧迫感が苦手、目覚ましが聞こえるか不安——どれも珍しくありません。その場合は、音を消すのではなくまぎらせるほうが続きます。手順は音が気になって寝つけない夜ににまとめています。
同室のいびきが理由なら、同室のいびきで眠れない夜にも確認してください。呼吸が止まって見える場合は、耳栓の前に伝えるべきことがあります。
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