カーテンを替えられない部屋、同室の人が別の時間に起きる部屋、昼間に眠る部屋。そういうときにアイマスクが残ります。
選ぶ決め手は数字ではなく、顔に沿うかどうかです。 「遮光率99.99%」は、生地を平らに置いて測った値でしかありません。
「遮光率99.99%」は、生地の値です
遮光率を測るJISの試験があります。**JIS L 1055(遮光性試験)**です。測り方はこうです。
直径100mmの孔の上に試験片を載せた時の照度を測定し、下式の通り遮光率を算出します
遮光率(%)={(試験片を装着しない時の照度ー試験片を装着した時の照度)/試験片を装着しない時の照度}×100
生地を平らに広げて、まっすぐ通る光を測る方法です。そして試験の対象品として挙げられているのは、遮光カーテンと暗幕。アイマスクは挙がっていません。
顔には凹凸があります。鼻の横、頬の上、こめかみ。 ここにすき間ができれば、生地がどれだけ光を通さなくても、そこから光は入ります。
つまり「遮光率99.99%」は、その生地が持っている上限であって、着けたときにその暗さになるという意味ではありません。
光を遮ること自体には、根拠があります
数字が比べられないだけで、遮ること自体は意味があります。
厚生労働省の睡眠ガイドは、こう書いています。
寝ている間は、低い照度の光でも中途覚醒時間を増加させ、睡眠の効率を下げることが報告されており
わずかな光でも、夜中に目が覚める時間が増える。 これが前提です。
健康な人での研究もあります。 18〜35歳の94人が、1週間アイマスクを着けて眠る期間と、着けない期間を比べた実験です(カーディフ大学、2023年)。結果は、アイマスクを使った期間のほうが、翌日の記憶の符号化と覚醒度が良かったというものでした。35人での2つ目の実験でも再現され、その差は徐波睡眠(深い眠り)の長さで予測されていました。
ただし正直に書くと、この研究が示したのは「翌日の記憶と覚醒度」です。 寝つきが早くなった、睡眠時間が延びた、ではありません。
入院患者を対象にした研究では、もう少し直接的な結果が出ています。24件のランダム化比較試験・1,507人を統合した解析では、耳栓・アイマスク・音楽を組み合わせたものが最良でした。そして単独で比べたときの順位は、アイマスク → 音楽 → 静かな時間 → 耳栓の順だったとされています。
別のアンブレラレビュー(9件のレビュー・109本の原著)は、耳栓とアイマスクについて「中程度の質のエビデンスで、おおむね良い結果が示され、有害な影響は報告されなかった」とまとめています。
選ぶときに見る3点
比べられる数値がない以上、自分の顔に合うかで選びます。
① 鼻の横にすき間ができないか。 いちばん光が入るのがここです。ノーズワイヤーが入っていて、鼻の形に沿わせられるものだと調整できます。頬まで覆う大きさがあると、下からの光も減ります。
② まぶたに触れないか。 目の位置にくぼみがある立体型なら、まばたきができて圧迫感が減ります。平らなタイプは、まつげが当たって気になる人がいます。
③ 後頭部のバンドが結び目にならないか。 横向きで寝ると、後頭部の留め具が枕に当たります。面ファスナーや平たいゴムのほうが、当たりが少なくなります。
なお、締めつけの強さと健康への影響について、公的な資料は見つけられませんでした。 痛い・跡が残るほど締めない、という常識の範囲で考えてください。
カーテンとの使い分け
どちらを選ぶかは、部屋ごと暗くしたいのか、自分だけでいいのかで決まります。
| 向いている場面 | |
|---|---|
| 遮光カーテン | 自分の部屋。同居者も同じ時間に寝る。長く住む |
| アイマスク | 賃貸で手を入れにくい。出張・旅先。同室の人が別の時間に起きている。昼間に眠る |
カーテンの等級には、1級の中にA++〜Cの5段階があり、しかも目視で判定されるという別の落とし穴があります。詳しくは遮光カーテンの等級の選び方にまとめました。
出張先で使う場合の持ち物は出張先や旅先で眠れないときに、夜勤明けに昼間眠る場合は夜勤のある人の眠り方に書いています。
朝の光で起きたい人は、注意が要ります
ここは矛盾するところなので、先に書いておきます。
朝に光を浴びることは、体内時計を整えるうえで欠かせません。カーテンを少し開けて寝ると朝の光が勝手に入る、という手順を朝、布団から出られないときですすめています。
アイマスクは、その光も遮ります。
だから、朝の光で起きるつもりなら、目覚めたらすぐ外すか、寝返りで自然に外れるくらいの締め方にしておくほうが合います。逆に、夜勤明けや夏の早い日の出のように朝の光を遮りたいのなら、そこがアイマスクの向いている場面です。
目覚ましは聞こえますか
アイマスクと耳栓を組み合わせた研究もありますが、目覚ましが聞こえるかどうかが前提条件です。耳栓は遮音の数字が大きいほど良いわけではありません(睡眠用の耳栓の選び方)。
目覚ましの音は置き場所でも小さくなります。距離が2倍になると6デシベル下がるので、遠くに置くほど不利です(目覚ましに気づかない朝)。
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- 一般財団法人カケンテストセンター「遮光性試験(JIS L 1055)」
- Greco V ほか「Wearing an eye mask during overnight sleep improves episodic learning and alertness」Sleep 46(3):zsac305, 2023
- Fang CS ほか「Effectiveness of sound and darkness interventions for critically ill patients' sleep quality」Nurs Crit Care 29(1):134-143, 2024
- Bellon F ほか「Effects of nursing interventions to improve inpatients' sleep in intensive and non-intensive care units」J Clin Nurs 32(9-10):1963-1978, 2023
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(令和6年2月)